誤訳の話のところでちょっと話の流れに合わないので書いていない、数学からの誤訳(誤訳でないとしても直訳である)の例。
有理数は、rational numberの訳で、整数の比(ratio)で表せるという意味だが、直訳気味に訳しているため、何か合理的な数なのだろうかという印象を受ける。有理数はまだいいが、無理数(irrational number)は、まるで何かが無理な数のように思えてしまう。無理な数を無理矢理作るな! という冗談もある。もちろんこれは何かが無理なのでも不合理なのでもなく、比で表せないという意味である。簡単に言うと分数で表せないということだ。原義からすると有比数、無比数とでも訳せばよかったかという意見もあるが、言葉として定着してしまったあとなので今さらかもしれない。いったい何が無理なんだと聞かれたら、分数で表すのが無理、とでも覚えておこう。
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