立冬 山茶はじめてひらく

石庭 雑記(二十四節気など)

令和元年11月8日は立冬です。令和二年では11月7日です。暦の上ではここから冬になります。体感としては秋ですね。
山茶(さんちゃ)とあるのは、これを中国由来と考えれば椿(つばき)のことです。椿とその仲間をすべて指しています。日本では山茶花と書いて「さざんか」と読みます。さざんかはツバキ科ですが椿と少し性質が違います。さざんかのほうが葉の縁がぎざぎざしており、花が散る時には花弁が一枚ずつはらはらと散ります。椿は花全体がぽとりと落ちます。重要なのは見頃で、椿はまさに冬の花、もっと寒くなってから咲きます。いっぽう山茶花の見頃はちょうど今頃なのです。よって山茶はさざんかとしておくと季節と暦があうことになります。
童謡「たきび」にも山茶花がでてきます。山茶花の垣根は今でもよく見ますね。落ち葉を集めて焚き火をするのですから、晩秋・初冬にぴったりの歌です。

山茶花の垣根に人を尋ねけり (正岡子規)

山茶花や亭をめぐりて小道あり (夏目漱石)

また、この時期ぱらぱら降る通り雨を時雨(しぐれ)といいます。元々は日本海側にみられる気象で、全国的なものではありませんが、歌などにはよく読まれ知られています。

大空は曇らざりけり神無月 時雨心地は我のみぞする (拾遺和歌集)

神無月は旧暦十月で、新暦では十一月ごろです。ですので霜降のころより立冬にいれました。時雨には初冬の連想があり、季語としても冬です。上の引用からもわかるように、時雨は涙の比喩で、時雨心地は涙のでそうな気持ちを表しています。時雨の時季というが晴れている十一月、しとしと時雨の降る心地がしているのは自分ばかりか……

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