本当の虹の色 あなたが見るレインボーカラー

虹 雑記(二十四節気など)

 虹の色は何色ですか? もちろん七色、と答える人は多いと思います。赤・橙・黄・緑・青・藍・紫です。
 ただ、筆者の感覚では実のところ子供のころから、七色に見えたためしがありません。筆者としては、まあ目が悪いのだろう、感覚は人それぞれだしなと思っていました。
 アメリカ・イギリスなどの英語圏では虹は六色と考えるそうです。藍(indigo)のところはそんなはっきりした区別はないでしょうというわけです。筆者も七色に見えたことがなかったので、そういう意見もあることにはほっとします。
 虹を何色と考えるかは文化によって違います。ドイツ・フランスなどは五色と考える人がいるようです。古代中国では虹は五色と考えられていたようで、日本もそうでした。大昔から虹は七色と言われていたわけではありません。
 さて、ではどうして虹は七色ということになったのでしょうか。どうもこれはニュートンの説が輸入された結果のようです。ニュートンは光学の分野にも業績があることは物理学を知る人ならご存じでしょう。ニュートンは音階がレミファソラシドの7つあることからの連想で、虹の色も7つあるべきと考えました。これはいささか強引なべき論です。しかし当時としては、音楽は重要な学問で、しかも神の造ったこの世界は調和してできていると信じていましたから、思考の飛躍でもなんでもなかったのです。
 自然の虹は条件により見え方が異なり、ある色がはっきり見えないことはよくあることです。虹の色は空気中に出現している水滴の大きさに影響されますし、太陽の高度が低い時は赤系統の色が強く、太陽の高度が高い時は青系統の色が強くなるという研究もあります。虹は見えている地平線上に存在している物体ではなく、分光した光が人間の目に入射しておこっている「現象」です。実際には光の連続したスペクトルがあるだけで、不連続な境界などなく、ましてそれぞれの光に色がついているなどというものではありません。色の感覚は人間の心理に発生しているのです(感覚の質、クオリアと言ってもよい)。そういったことまで考えれば、虹の色というものは決められるものでもないと言うことができます。
 十八世紀の著名な美術批評家ディドロは、画家が紋切型の七色の虹を描くことを批判しています。画家は本当にそう見えたのか、七色だと一般に言われているからそう描いたのではないか、と疑ったのです。
「絵画には、金科玉条として虹の配色を七つ、それだとわかるように描く公式主義者がいる」
 たしかに、絵画中の「観念上の虹」は、それとわからせるための記号です。そして言うまでもなく、近代以前の西洋絵画に描かれているもののほとんどは記号です。ディドロは批評の力で近現代的な美術のあり方を呼び込んだ人物の一人でした。自然をよく見よというその主張は一貫しています。
 本当は自分でも三色くらいにしか見えていないのに、そう決められているんだからといった理由で、虹は七色だよ! と主張するとしたら、なんかへんですね。三色に見えてもいいし、八色に見えたっていいのです。それが本当のレインボーカラー、といえるのではないでしょうか。

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